ロボット国際会議「ICRA2009」、神戸で今日から開催(2009年5月)

いよいよICRA2009の開催日となりました。本日の告知をお届けします。

米国電気電子通信協会(IEEE)が主催

各国の大学の研究者らが参加

ロボットに関する世界最大の国際会議「2009年IEEEロボティクス・オートメーション国際会議(ICRA2009)」が12日から17日まで、神戸市中央区の神戸国際会議場と神戸ポートピアホテルで開かれる。世界各地で毎年行われており、日本での開催は1995年以来2回目。会期中、各国の大学の研究者ら約1300-1400人の参加を見込んでいる。

東京大学の下山勲教授が講演

日本学術会議と米国電気電子通信協会(IEEE)を構成する1つの組織「IEEEロボティクス・オートメーション学会」の主催。米国、欧州、アジアでほぼ順番に開催しており、今回の神戸開催は日本のロボット関係者らが提案して2003年に認められた。事前登録ではICRA2009参加者の約4分の1を日本人が占める。ICRA2009の共通テーマは「活力ある社会のためのロボティクス」。招待講演では東京大学の下山勲教授と米コロンビア大学のシュリー・ネイヤー教授、英ケンブリッジ大学のダニエル・ウォルポート教授の3氏がそれぞれ最先端の話題を講演する。

神戸 ロボット会議開幕 会場でマスク配布も(2009年5月)

ICRA2009の開幕初日の朝の様子です。

新型インフルエンザの感染拡大で

世界最大規模となるロボットの国際会議が12日、神戸・ポートアイランドの神戸国際会議場などで始まった。17日までの6日間に43カ国の研究者ら約1400人が参加するが、新型インフルエンザの世界的な感染拡大を受け、マスクの配布など警戒感が高まった。

独カールスルーエ大学

「2009年IEEEロボティックスとオートメーションに関する国際会議」。米国電気電子工学会(IEEE)が主催。日本での開催は1995年の名古屋市に続き2回目。初日は、最新の研究成果や課題を発表するフォーラム(神戸市と共催)が開かれ、約150人が出席した。独カールスルーエ大学のリューディガー・ディルマン教授は「ロボットは魅力的な研究分野。国際的な協力や産学官連携で、競争力の高い技術が生み出せる」と話した。会期中は人型や宇宙などテーマ別に分科会が開かれ、最新の研究成果が発表される。16日には市民向けセミナーも開かれる。

サーモグラフィーによる体温検査

一方、新型インフルエンザの影響で、受付ではサーモグラフィーによる体温検査やマスク配布があり、会場では参加者らがマスク姿で席に並んだ。

ICRA2009、受動歩行ロボなど実演(2009年5月)

ICRA2009は本日、目玉イベントのロボットの展示、実演が始まります。

家庭・オフィス向け作業ロボット「PR2」

神戸市中央区で開催中のロボットに関する世界最大の国際会議「2009年IEEEロボティクス・オートメーション国際会議(ICRA2009)」(日本学術会議、IEEEロボティクス・オートメーション学会主催)で14日、ロボットの展示、実演が始まった。

米ウィローガレージは家庭・オフィス向け作業ロボット「PR2」の紹介ビデオを放映。スティーブ・カズンズ社長は「ICRAは世界中からトップクラスのロボット研究者が集まる。知らない人には興味を持ってもらえる、いいきっかけができた」と話した。

名古屋工業大学
ハイボット(東京都大田区)

ハイボット(東京都大田区)の瀧田謙介社長は「日本よりはっきりしたニーズが聞ける」と、海外の研究者らからの反響について語った。名古屋工業大学の藤本・佐野研究室はモーターや位置センサーなどが不要な「受動歩行ロボット」を実演。下り坂を歩く姿を撮影したり、質問したりする人が相次いだ。

来月レスキューロボシンポジウム開催(2001年12月)

研究機構設立準備会

国際レスキューシステム研究機構設立準備会と計測自動制御学会などの主催で、2002年1月17日に神戸市中央区の神戸国際会議場で「レスキューロボットシンポジウム2002in神戸」が開かれる。ニューヨーク世界貿易センターで活躍する被害者探索ロボットの開発者ら世界のレスキューロボットの研究者が一堂に集まる。

米国南フロリダ大学
科学技術振興事業団の北野宏明氏と神戸大学工学部助教授の田所諭氏

レスキューロボシンポでは、科学技術振興事業団の北野宏明氏と神戸大学工学部助教授の田所諭氏が「ロボカップレスキュー:新しい防災RT(ロボットテクノロジー)の提案」、米国のロボット探索救助支援センターのジョン・ブリッチ氏が「ニューヨーク世界貿易センターでのロボットの活動」、米国南フロリダ大学教授のロビン・マーフィー氏が「世界貿易センターでのロボット救助から学んだこと」、消防研究所の天野久徳氏が「消防防災ロボットの現状と研究開発」をテーマに講演を行う。ジョン氏とロビン氏は世界貿易センターで人命救助活動を行うロボットの開発者で当日はそのロボットの実演も行う。

ボット産業育成へ

阪神・淡路大震災を契機に行政機関や産業界では救助システム開発への関心が高まっており、また神戸市は、地域産業活性化の一環としてロボット産業の積極的な育成を目標としていることなどから、神戸開催が実現した。定員300人。参加申し込みは神戸商工会議所レスキューシンポ事務局へ。

ロボット技術学ぶセミナー 来月、神戸で開催(2009年4月)

ロボットデモンストレーション&セミナー

研究者たちが最先端のロボット技術を解説する「ロボットデモンストレーション&セミナー」が5月16日、神戸市中央区の神戸ポートピアホテルで開かれる。

世界最大規模のロボット学会「2009年IEEEロボティクス・オートメーション国際会議」の開催に合わせ、同会議が主催。映像を交えて開発の様子などを話す。

神戸市産業振興局工業課

午後1時半~5時。無料。申し込み締め切りは4月20日。定員1000人。神戸市産業振興局工業課。

ロボット関連記事~「会話ロボット最前線」(2002年1月、読売新聞)

「ベスト・オブ・ロボット関連記事」。今回は、2002年1月1日付読売新聞の「会話ロボット最前線」です。

進化する機械の心、人間との共生探る

ロボットは夢を見るようになるのか--2足で歩行するヒューマノイド(人間型)ロボットが次々と登場し、SFや漫画の世界のように、人間とロボットが共に暮らす世界はすぐそこまで近づいてきている。人間に似た外見はもちろんだが、感情の表現や人とのコミュニケーションといった「心」も、最近、その進化は著しい。21世紀にロボットはどこまで人間に近づき、どういった形で共生できるのか。研究者たちのたゆみない挑戦が続く日米のロボット最前線を探った。

産業ロボットから共存型ロボットへ

「ロボット先進国」といわれる日本では、長い間ロボットといえば、危険で単純な作業に従事する「産業ロボット」だった。だが最近では、職場や家庭など人間の日常生活に深く入り込んで活躍する「共存型ロボット」の開発も盛んになってきている。

茨城県つくば市の産業技術総合研究所
秘書ロボット「事情通」

茨城県つくば市にある産業技術総合研究所でもそうしたロボット研究に力を入れている。情報処理研究部門では1996年からオフィスロボットの開発を始め、秘書ロボット「事情通」を製作した。

スケジュールを把握

「事情通」は直径約60センチ、高さ約1メートルの円筒形ロボット。「こんにちは」とあいさつをすると、顔を向けて「こんにちは」と答える。「○×さんはどこ?」--オフィスにいます。「連れていって下さい」--部屋に行きます。そして、情報処理研究部門の研究者のスケジュールをすべて把握している事情通は、静かに動き出し、○×さんがいる部屋まで案内する。

話し言葉を解析

相手の話の意味を素早くつかみ、適切な判断を下す能力が秘書の必須条件だが、事情通も負けてはいない。本体の周囲に設置した8つの小型マイクを使って、オフィス内に飛び交う電話の音などの雑音から、話をしている相手の話し声だけを聞き取る。その話し言葉を、データベースと照らしあわせて解読し、瞬時に適切な回答をはじき出す。相手の話し声が到達する時間差をもとに話者がいる方向を検知し、体を向けて受け答えまでする。

表情

研究グループの原功主任研究官は「会話を通じて新しい情報を次々に記憶する。働くうちにますます優秀な秘書になる」と話す。今は、ヒューマノイドタイプも開発中。身振りで「表情」を加えて、より親しみやすくする計画だ。

声認識システム

この優秀な秘書にも苦手がある。あいまいな話し言葉を人間のように推し量って理解することができない。しかし、同部門の別の研究グループは、相手が言葉に詰まって言いよどんでも、話の前後の文脈から、適切な言葉を見つけ出す音声認識システムを開発中で、完成ももう間近だという。人間の良き職場仲間として、こうしたオフィスロボットが欠かせない存在になる日も遠くはないかもしれない。

社会相互行為研究用「む~」
関西弁

2人、3人と集まって、いや2台、3台と集まり、関西弁の井戸端会議が始まる--「あのなー」「それ、ええんとちゃう」「わからへんわ」。

会話の内容に取り立てて意味はないが、何か楽しそうだ。「ねえねえ」と話しかけると、「なんや、なんや」と騒ぎ立てる。

ATR知能映像通信研究所

くりっとした大きな一つ目に、ぷるぷると揺れるアンテナのような角を生やした、この「けったいな」ロボットは、ATR知能映像通信研究所(京都府精華町)の岡田美智男主任研究員らが開発した。名前は中国語の「目(むー)」から「む~」と付けられた。

相づち

「む~」は人と人のコミュニケーションを探るために作られたロボットだ。「コミュニケーションには、聞き手、話し手という役割分担や、相づちなどの反応、お互いの位置関係など、参加者のさまざまな要素が作用しあう。そこでは社会相互行為が意味を持つ」と岡田さんは説明する。

岡田さんは以前、音声認識などの情報処理を研究していたが、機械的な音声認識だけでは足りないことに気づき、「社会相互行為」に目を向けた。その成果が「む~」。

人の言葉は約300語
球形ボディー

直径30センチほどの球形ボディーには最新のパソコンと同じ性能の回路が納められる。「む~」同士は無線で交信し、人の言葉は約300語を理解する程度。これは、音声や画像の認識能力の高さよりも「おしゃべり」か「静か」かといった性格付け、相手との距離や、しゃべるタイミングなどを重視しているからだ。

「『む~』は、1人では何も出来ないロボット。仲間の輪の中で、初めて生き生きと動き出す」と岡田さん。子どもは、親が世話を焼き、兄弟、友だちと過ごす中で、少しずつ自分の可能性を開いていく。そこにヒントがあった。

英語などの言語学習

最近、「む~」を、英語などの言語学習に生かせないかと、教育関係者と話し合いを進めている。子どもたちが、気軽に英語を話せるよう、楽しい雰囲気作りに応用したいと考えている。コミュニケーション能力に障害を持つ児童の療育にも役立てないかと考えている。

間はあまりにも奥深い

人間同士のかかわりの「場」を、ロボットを使い研究する分野は、ここ2、3年、急速に進んでいるという。機械の処理能力がもっと高まれば、人間と同じになるのだろうか。「研究が進んでも、そこでまた新たな課題が見つかる」と岡田さん。自然の一部である人間はあまりにも奥深く、人間が人間について知っていることはまだあまりにも少ないようだ。

パナソニック介護手助け「ワンダー」
お年寄り、いやす「クマ」

音声を認識し、簡単な会話が出来るロボットは珍しくなくなってきた。が、機械を相手にしているばかりではやはりさびしい。「人と人をつなぐ」ことにねらいを定め、一人暮らしのお年寄りの家庭で活躍しているのが、松下電器産業(パナソニック)のクマ型対話ロボット「ワンダー」だ。

くらし環境開発センター

「お年寄りになるとさまざまな不安が出てくる。必要な時に役立てるパートナーをと、開発した」と、パナソニックくらし環境開発センターの山本浩司グループマネジャーは話す。ワンダーは現在、大阪府池田市の事業として、モニター実験が行われている。

福祉サービス支援センターとメッセージのやりとり

ワンダーは、ただの「会話ロボット」ではない。通信回線を使い、池田市の福祉サービス支援センターとメッセージのやりとりができるのだ。「メッセージはある?」と聞くと、センターからの伝言を再生してくれる。自分の声を録音しセンターに送信することもできる。

認識率は現在47%

音声認識するのはおよそ300語。「歌って」と言えば「ほいきた」と童謡を歌い出すし、「頭が痛い」とこぼせば「大丈夫?」と聞き返す。認識率は現在47%。十分に会話ができるレベルになるには、もう10-20年はかかるという。

ワンダーの電源のオンオフや、交わした会話はセンターに伝えられ、生活の様子のチェックにも利用される。

ホームヘルパーの代役ではない

ワンダーはホームヘルパーの代役を目指しているのだろうか。山本さんは「そうではない」と否定する。ロボットはあくまで情報をやりとりするための道具。ヘルパーは、集まった情報を基に、必要なケアを効率的に行う。1人のヘルパーが30-40人も担当するような現状では、ロボットの役割は今後ますます大きくなるだろうと話す。

老人ホームも導入

パナソニックでは、今年サービスを開始する老人ホームでもワンダーを導入、入居者と家族の声によるメール配信など情報通信技術をさらに盛り込んだサービスを行う予定だ。

MITの「Kismet」(キズメット)
喜怒哀楽は子どもの様に

ピンクの耳、ブルーの瞳(ひとみ)、赤い唇、ブロンドの眉(まゆ)の「Kismet」(キズメット)は、みんなの人気者だ。「いい子ね」とほめると笑い、「やめなさい」というと悲しげな顔をする。

成長するロボット

「ヒントは子どもたち。生まれたばかりの子どもが親から1つずつ学んでいくように、人間とのかかわりの中で成長するロボットを作れないかと思った」

マサチューセッツ工科大

米国マサチューセッツ工科大(MIT)のシンシア・ブリジール助教授(33)が、「キズメット」の製作を始めたのは5年前、大学院生の時だった。コンピューター科学専攻だったが、ロボット製作のプロジェクトに参加するようになり、MIT人工知能研究所の主力研究となっているキズメットを作るまでに至った。

CCD(電荷結合素子)カメラで、人の顔や動きを感知

キズメットは、人間の顔に似ている。両目の位置と顔の中心部の計4か所に置かれたCCD(電荷結合素子)カメラで、人の顔や動きを感知する。耳は集音マイクでできていて、人の声を聞き取る。首や耳、口、あご、眉、まぶたの各部に取り付けられた大小のモーターで、のけぞり、耳や眉の上げ下げ、唇をゆがめるといった、動作をこなす。いずれの動作も、コンピューターがはじき出した“感情”を表したものだ。

赤ちゃんロボット

技術の進歩で、二足歩行のロボットなどは、複雑な動作を正確にこなせるようになった。ブリジールさんはこれとは逆に、何も知らない“赤ちゃんロボット”を作ろうと考えた。「初めから複雑なプログラムを組み込まずに、むしろ何もない状態で、外に開いたシステムを作っておけば、より頭の良いマシンができるかもと考えたのです」と話す。

15台のコンピューターに接続

キズメットは、15台のコンピューターにつながっていて、目と耳から入った情報は認識回路で分析され、「心」のシステムに伝達される。

この「心」は自然な動きと感情を受け持つ。自然な動きには、視界に何かが入ると最初は興味深そうに見つめるが、目の前に突きつけられると頭をのけぞらせるなど、子どもが行う無意識の行動を組み込んだ。感情は、褒められると喜び、見たことがないものがあると興味を示す、怒られると悲しくなる、許されると安心するなど、子どもの感情が表れる仕組みになっている。

ただ、キズメットはその幼い「心」で、人間とコミュニケーションは取れるものの、そうした具体的な状況から何かを学び取るまでには“成長”していない。

学習ロボットの開発
ハリウッドの映画制作会社がデザイン

成長するには学習が必要と考えるブリジールさんは、新たな学習ロボットの開発に取り組む。ハリウッドの映画制作会社がデザインを担当、完成後は映画に出演する予定だ。「日本には動きの優れたロボットが多い。いつか協力してもっと人間に近いものが作れれば」と夢を語る。

ボストン郊外のブランダイズ大学

ボストン郊外にあるブランダイズ大のジョーダン・ポーラック教授(44)らは、世界で初めて自力で“進化”するロボットを作り上げた。

人工生命

進化ロボットは、全長が1メートル足らず。数本のプラスチック製の棒と関節、電線の人工神経でできた単純な作りをしている。様々な可能性の中から最も動くのに適した形を選び出し、自分で自分を形作って動き始める。今までコンピューターの中でしか実現できなかった人工生命が、現実に再現されたものとして世界的に注目されている。

DNA

一方、「逆に、地上の生命がどう進化してきたかを知る手掛かりにもなる」と、さらに深化させたロボットの製作に取り組んでいる。光や環境に反応したり、4つの塩基配列を組み合わせたDNAと同じような情報に基づいて自分を組み立てるロボットだ。

映画「2001年宇宙の旅」のHAL

成長し、進化する--刻々と進むロボット開発の未来には何があるのだろうか。一部には、映画「2001年宇宙の旅」で宇宙船の乗組員を次々と殺す人工知能「HAL」のように、人類に脅威を与える別の「生命体」になるのではないか、との声もささやかれている。しかし、とブリジールさんは言う。「だからこそ、社会的なロボットが必要です。社会の中で、人間の感情や思考をくみ取り、人間と同じ方法で判断し、行動するロボットができれば、重要な友人になるのではないのでしょうか」

■用語(keyword)■

音声認識

人間の声で機械を操作するための機能。マイクから入ってきた音の波形から、母音や子音などの「音素」を取り出し、単語、文節、文章へと組み立てていく。声の質は、性別や年齢だけでなく、個人によっても大きく変わるので、正確な認識をするのは非常に難しい。

ロボット3原則

科学者で作家でもあるアイザック・アシモフが提唱したロボットが守るべき3つのルール。

  • (1)人間に危害を加えてはならない。また、危険を見過ごすことで、人間に危害を及ぼしてはならない。
  • (2)第1条に触れない範囲で、人間に与えられた命令に従わなければならない。
  • (3)第1、2条に触れない限り、自分を守らなければならない。

ロボット(Robot)

チェコの劇作家カレル・チャペックの造語。チェコ語で「奴隷」「労働」を意味する「ロボタ」が語源。

ヒューマノイド

人間の形をしたロボット。「アンドロイド」とともにSF小説などで使われてきた言葉だが、ロボット工学ではヒューマノイドが一般的。サイボーグは、一部を機械などに置き換え改造した人間。

二足歩行

ゆっくり歩くおもちゃのロボットでは、重心は常に両足の間のどこかにある。「静的歩行」と呼ばれる。人間は、体を前や横に傾け、バランスを取るように足を出すことで速く滑らかに移動する。「動的歩行」と呼び、ホンダの「ASIMO(アシモ)」など高度なものの歩行がそうだ。動的歩行には高度な計算・機械技術がいる。

ROBODEX(ロボデックス)(産経新聞、2002年3月)

ROBODEX(ロボデックス)とパートナー型ロボットについての産経新聞の記事を、一部編集し、転載いたします。

パートナー型ロボット急成長

平井和雄常務

人との共存を目的にしたパートナー型ロボットが急速に成長している。31日まで横浜市で開かれている展示会「ROBODEX(ロボデックス)2002」では、出展者数が前回に比べ約4割増の29に上り、娯楽から警備までさまざまな可能性を感じさせる72種が勢ぞろいした。「技術進歩のスピードには驚くものがある」(平井和雄・本田技術研究所常務)だけに、ロボット市場の誕生もそう遠くないかもしれない。

近い将来「市場」誕生も

二足歩行に注目

パートナー型の中で注目を集めたのは、ヒューマノイド(人間型)ロボットの代表的な技術である二足歩行タイプだ。

AIBOがヒット

ペット型ロボット「AIBO(アイボ)」がヒットしたソニーが出展した「SDR-4X」は歌って踊れるほか、段差のある床を歩いたり、手をついて起き上がったりできる。相手の顔と名前を覚え「こんにちは、○○さん」と呼び掛ける。近い将来、数百万円程度で発売する計画という。

ASIMO

ホンダが約1年半前に開発した人型ロボット「ASIMO(アシモ)」も進化した。開発責任者の平井氏は「これまではスイッチを入れてから動かすまで2時間以上かかったが、今回出展した最新型は一発で起動できる」と話す。

東京工業大学

このほか、東京工業大学など大学の研究室からも、最小限の部材で二足歩行を実現する研究成果などが公開された。

綜合警備保障
ガードマンロボット

一方、火を発見すれば「火災発生」と叫ぶのは、綜合警備保障(本社・東京)が4月1日、950万円で発売する“身長”133センチのガードマンロボットだ。「顔」に当たる部分に表示画面を備え、博物館などの案内役にもなる。

テムザック
番犬型ロボット

また、三洋電機は、北九州市のベンチャー企業テムザックと番犬型ロボットを共同開発。今後、普及が予想される第3世代携帯電話を通じて遠隔操作し、外出先から家の中を点検できる。2003年度(平成15年度)に100万円前後で発売する予定だ。

経済産業省

「経済産業省などは21世紀の中ごろまでにロボット産業を自動車産業と同規模に育てようとしている。ロボット産業はほぼ確実に日本の産業を担う存在になる」

立花隆

ROBODEX(ロボデックス)の展示会のオフィシャルアドバイザーである評論家の立花隆氏は、ビデオレターの中で、日本の国際競争力が強いロボット産業の将来にこう期待を寄せた。

英ベンチャー企業

たしかにロボット開発熱は、企業から大学まで広がりつつある。大学・専門学校関係者の出展は11件と参加企業の14社に迫る。海外から唯一参加した英ベンチャー企業の幹部は「大学関係の出展が多いのに驚いた」と話す。

高本陽一社長

一般家庭に普及する時期や、新たな産業としてどれだけ成長するかは「まだ予測不可能」(平井常務)。大手企業とロボット開発を手がけるテムザックの高本陽一社長は「まだロボットは不要な存在だが、必要不可欠なものにするため、協力して育てることが重要」と指摘している。

鉄腕アトムの誕生日「2003年4月7日」

ロボデックス事務局では、次回の展示会をアニメ「鉄腕アトム」の誕生日「2003年4月7日」に開催する計画だ。

ソニー土井上席常務

「アトム」「ドラえもん」などに親しみ

ロボットブームの火付け役となった「AIBO」開発の中心人物、ソニーの土井利忠上席常務は「世界をリードする日本のパーソナルロボットは21世紀には非常に大きな産業となる」と語った。

日本人は自律型に愛着

-日本でロボット熱が高いのはなぜ

「日本人は新技術・新製品に対し敏感であり、しかも鉄腕アトムやドラえもんなどで自律型ロボットに親しみを持っている。(ロボットに対する)愛着は海外に比べて強いといえる」

コンピューターの進化形

-今後の市場性は

「ロボットはコンピューターのひとつの進化形。21世紀は人の感性に働きかける右脳ビジネスが盛んになる。ひとつのポイントが(人に安らぎを与えたり、癒やしたりする)エンターテインメントロボットであり、ビジネスになる」

-日本のパーソナルロボット開発は

「世界をリードしている。ロボット開発にはメカニクス、エレクトロニクス、サーボ技術、コンピューター、ソフト、人工知能といったさまざまな知識・ノウハウとこれらを統合するエンジニアリング技術が必要で、日本の家電や自動車メーカーなどはこうした要件を兼ね備えている」