Toyota Partner Robots WINGLET(2006年8月)

トヨタ 介護・接客、労働力に

ICRA2009に先立ち、愛知万博のトヨタグループ館で人気者だった、トランペットなどを演奏する人型の「パートナーロボット」。万博終了後も演奏の腕を磨き、活躍の場を広げている。技術力のアピールや企業イメージの向上に一役かっているだけではありません。少子高齢化や労働力不足など未来を見据え、新たなビジネスを切り開く役目も担っています。

人型ロボ、進化中 6キロで駆け足・留守がっちり・高齢者お相手
メガウェブ

東京都江東区にあるトヨタ自動車の大型ショールーム「メガウェブ」。毎日3回、1階の一角に人だかりができる。目当てはロボット。「星に願いを」をトランペットで演奏し始めると、集まった親子連れらは、カメラ付き携帯電話などで撮影を始めた。

バイバイ--。ロボットは演奏を終えると左手を振る。ややぎこちない動きに、思わず笑いがもれる。担当者は「予想以上に関心が高い」。当初夏休み期間だけの予定だった展示を、秋以降も続けることにした。

愛知万博用に作ったロボットは25体

トヨタが愛知万博用に作ったロボットは25体。そのうち15体がトランペットを吹ける二足歩行型だ。万博終了後1年足らずでレパートリーは5曲から20曲に増えた。子供向けにアニメ主題曲のメドレー、外国人向けに外国映画の主題歌など、バラエティーに富む。一部のロボットは、演奏後に口からトランペットを離すなど動きも改良した。

トヨタ会館、中部国際空港、ラグーナ蒲郡

そのかいあって出番は増え続ける。東京都内では豊島区池袋のショールームにも展示。愛知県内では豊田市のトヨタ本社地区にあるトヨタ会館のほか、中部国際空港(セントレア)、ラグーナ蒲郡などで演奏を披露。札幌の「こども未来博」、岐阜県瑞浪市の子供向けイベントなどからも「出演」の要請が相次いだ。

1体は今年初め、欧州に渡った。ベルギーにあるトヨタの研究開発拠点に展示され、チェコの大学でも演奏した。さらにもう1体が渡米の準備中だ。

高木宗谷部長(Dr. Soya Takagi)

トヨタが人型ロボット開発を始めたのは2001年。万博の地元企業として、あくまで「集客の目玉づくり」が目的だった。だが、現在もライバル会社より多い100人体制で研究・開発を続ける。ロボット事業が「2010年代にはビジネスとして成立する」(幹部)とみるようになったからだ。開発の指揮を執るパートナーロボット開発部の高木宗谷部長(Dr. Soya Takagi)は「楽しいだけでなく、人の役に立つロボットを作る」と強調する。

介助ロボット

ロボットとの共生は、もはや夢物語ではない。人の指示に従って、ものを取ったり運んだりできる「介助ロボット」の実証実験を、トヨタは2008年にも医療機関で始める計画だ。介助犬の代わりぐらいなら、ほぼこなせる域に達しているらしい。

ロボットスーツ

人型ロボット技術を応用する「ロボットスーツ」も自社工場での実用化を目指す。着るとモーターの力で、自分の本来の2倍近い力を出せるという。

東京大学やパナソニックと共同開発

東京大学や松下電器産業(パナソニック)などと共同でロボット開発に取り組む組織も、今月立ち上げた。介助・介護、接客など、少子高齢化や労働力不足に対応する分野での開発に力を入れる。

Europe

欧米にロボットを置く理由の1つも、現地での研究や情報収集に力を入れるためだ。10以上の大学と基礎的な共同研究を始めており、ロボット開発部の担当者も数人ずつ常駐させている。

Honda Asimo
Disney

いろんな企業が人型ロボットを開発中だが、目指す方向は様々だ。

ホンダは2000年、二足歩行ロボット「アシモ」を発表。2005年には時速6キロで走れる新型を出した。すでに欧米やタイに計8体が進出。米ディズニーランドに展示されるなど「広告塔」として活躍している。ただ、あくまでもバイクや自動車と同じ「モビリティ(移動体)」という位置づけで、現時点では「介護用や産業用などには進まない」(広報部)という。

wakamaru
価格は157万5000円

商品化で先行したのは三菱重工業。利用者のスケジュールを管理したり、「留守番」として留守宅で異変を察知したら利用者の携帯電話に情報を通知したりする家庭用ロボット「ワカマル」(Wakamaru)を、2005年秋に東京都内限定で試験販売(157万5000円)した。ただ販売目標(100台)に達せず、メンテナンスも困難だったことから、今後の開発は企業・官庁向けにシフトする。

EMIEW、Papero

人とコミュニケーションできる「Papero(パペロ)」(NEC)や「EMIEW」(日立製作所)も、接客用や高齢者の話し相手として、将来的には市場での販売を目指す。ともに対話力の向上が課題だ。

<その他のロボット>

アシモ(ホンダ)

ワカマル(wakamaru,三菱重工業)

EMIEW(日立製作所)

パペロ(Papero,NEC)

Bicycle Type Robot MURATA BOY(2005年9月)

村田製作所(MURATA)は29日、独自開発の自転車型ロボット「ムラタセイサク君」の新型モデルを発表した。部品メーカーであるMURATAの最先端技術を結集し、静止やバックが可能になるなど、15年前に開発した旧モデルと比べて大幅に性能が向上した。MURATAは「当社のモノづくり技術を多くの人に知ってもらいたい」と話しており、企業PRに積極的に活用する考えだ。

自転車型ロボ 村田製作所開発

平均台走行、バックも可能に
高さ約50センチ、重さ約5キロ

ロボットは高さ約50センチ、重さ約5キロ。同日、京都府長岡京市の本社で行われた発表会で、幅約2センチの平均台の上をゆっくりとしたスピードでほとんどぶれずに走行した。

ジャイロセンサー
最高時速は約2キロ

最高時速は約2キロで、倒れずにたっていることもできる。“秘密”は腹部に内蔵された「ジャイロセンサー」。車体の微妙な傾きを検知し、円盤を回転させて平衡を保つ機器で、デジタルカメラの手ぶれ防止機能などにも応用されている技術だ。

障害物を検知して自動的に停止

このほか、障害物を検知して自動的に停止したり、カメラ撮影した画像をパソコンなどに送信できるなど、旧モデルにはなかった機能を搭載した。

CEATEC JAPAN2005>
1時間の充電で約30分の走行

約1時間の充電で約30分の走行が可能。市販はせず、主にイベントやテレビCMなど企業PRに活用する。さっそく10月4日から千葉市で開かれる最新IT(情報技術)機器の展示会「CEATEC(シーテック)JAPAN2005」でお披露目する。

ロボット市場は2025年(平成37年)に7兆2000億円

日本ロボット工業会の調べによると、ロボット市場は2025年(平成37年)に7兆2000億円に達する見通し。部品メーカーである村田製作所がロボットを開発するのは、完成品を作らないため顧客に伝えにくい技術力を完成品メーカーなどにアピールすることが主な狙いだ。

1990年に初代

村田製作所は1990年に初代自転車ロボット「ムラタセイサク君」を開発し、会社のテレビCMにも“出演”して話題を集めた。CMをみて入社を志望した学生も出るなど会社の知名度向上に効果があった。

Koichi Yoshikawa(吉川浩一)
Development and Utilization of

今回発表した新型モデルは昨夏ごろ、若手社員が自発的に企画を立ち上げ、営業、生産技術、商品、広報の各部門のスタッフ約20人が協力して開発した。中心メンバーは、村田製作所広報部マネージャーの吉川浩一(Koichi Yoshikawa)氏。社内のチームワーク向上にも役立っているという。

産構審小委、技術戦略マップに構造化知識など追加(2007年2月)

経済産業省の産構審技術分科会の小委員会は2007年1月31日、「技術戦略マップ2007」に向けたローリング進捗状況の中間報告をまとめた。ナノバイオ、自動車用部材、次世代ロボットに必要な知能化や構造化知識の技術を追加し、最新の技術動向に基づいた戦略マップを更新、技術戦略マップを研究開発マネジメントに活用する導入シナリオの検討と実行を通じて、学会、地域など外部に還元する-などが柱。3月末までにまとめる。

診断・治療機器分野での治療情報や再生医療分野での細胞療

主要分野のうちライフサイエンスでは、診断・治療機器分野での治療情報や再生医療分野での細胞療法などの技術を追加、検討する。ナノバイオについてはナノテク・材料分野連携を進めるなどのローリング方針が打ち出された。

MEMS分野

エネルギーでは、超長期エネルギー技術ビジョンで洗い出された技術や2006年5月に策定された「新・国家エネルギー戦略」を踏まえ、2030年を見据えて省エネ、燃料、電力・ガスなどのマップを策定中。このほか、ロボット分野、ナノテクノロジー分野、部材分野、MEMS分野、情報通信分野、環境・エネルギー分野、製造産業分野などの作業が進んでいる。

日本ロボット学会

一方、産学官ロードマップ・コミュニケーションの一環として、日本機械学会、応用物理学会、日本化学会、日本ロボット学会などとのアカデミックロードマップに関する考え方、検討体制などをとりまとめる。 。

合同アカデミックロードマップ委員会

日本化学会との検討体制は、「バイオ計測とナノマイクロ化学の新展開」「均一・不均一系触媒の融合・協奏」「生命分子科学の進展」「ケミカルバイオロジー・化学から生物へ」「次世代型環境応答金属錯体」「分子結晶の化学と電子デバイスへの応用」の6分野。また「ロボット分野に関する合同アカデミックロードマップ委員会(ARM)」を発足、2050年の人間像、社会像を見据えたアカデミックロードマップの策定を行う。

Demonstration and Invited Talk(2006年6月)

ロボット取材日記。今回は、「お絵描きロボット」がテーマです。

Humanoid Robot HRP

「お絵描きロボット」 

なぜ人は絵を描くのか? 世界各地に残る数万年前の洞穴壁画が示すように、描く行為は太古の昔より続けられてきた。その謎を解くため、アーティストやロボット工学の研究者が協力、絵を描くロボットの開発を進めている。人間の描く行為をロボットにまねさせることでそのプロセスを解明し、創造性の秘密に迫るのが目的だ。

Art, Science, and Robot Soul
美術とは…人間とは何か 進化する「ドットちゃん」

東京都江東区の日本科学未来館で5月、「お絵描きロボット ドットちゃん」が初めて一般公開された。ドットちゃんの前に置かれた1つのリンゴ。ドットちゃんは4本の指がある右手で筆を握り、9つの目でリンゴを“見て”、どのように描くか“考え”、ゆっくりとリンゴの丸い輪郭線を引いていく。線がかすれているのを“確認”すれば、“修正”もする。紙上にはロボットが描いたとは思えない、味わいのあるリンゴが現れた。同じリンゴでも描くたびに微妙に異なる絵になるという。

池内克史教授が協力

東京芸術大学大学院の藤幡正樹教授が開発

このドットちゃんは、世界的なメディアアーティストである東京芸術大学大学院の藤幡正樹教授の研究室を中心とする共同プロジェクトが、1年半前から開発。最先端のロボット工学で有名な東京大学大学院情報学環の池内克史教授(Prof. Katsushi Ikeuchi, University of Tokyo, Japan)の研究室が協力している。

Katsushi Ikeuchi

「描くには、3つのポイントがあります」と池内教授。「何を描くのか、どのように描くのか、そして、描く際の身体との関係です」。ドットちゃんは現在、「対象を観察・モデル化」「描画手順の抽出」「絵筆や絵の具を使った描画」の3つのプロセスで絵を描いている。こうした研究をもとに、人間がいかに複雑な段階を経て絵を描いているか分析される。今後は色を塗るなど、より豊かな表現につなげていきたいとする。

Digital技術

研究では「美術とは何か」という問い直しをしている。それは飛躍的に進化しているDigital技術による新たな表現の可能性や、「人間とは何か」という根源的なテーマへと還元される。「写真が出てきて印象派や抽象画が生まれたように、デジタルの技術によってアートがどう変わるのか。人間はどこへ行くのかが気になります」と藤幡教授は話している。